館長だより
NHKの戦後80年ドラマ「八月の声を運ぶ男」制作開始
2025/04/18
みなさま、こんにちは。国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館長の野瀬です。
先日、NHKから、戦後80年ドラマ「八月の声を運ぶ男」の制作が開始されたことの発表がありました。
主演・本木雅弘さん、作・池端俊策さんをはじめとする素晴らしい製作陣が結集され製作されるドラマだとお聞きしており、今からその完成を楽しみにしています。
主演・本木雅弘さん、作・池端俊策さんをはじめとする素晴らしい製作陣が結集され製作されるドラマだとお聞きしており、今からその完成を楽しみにしています。
このドラマは、私費を投じ1000人以上の被爆者の声を録音し、未来に遺(のこ)した長崎出身のジャーナリスト伊藤明彦さんの実話を元にしたものです。
伊藤明彦さんは、8歳の時に長崎で入市被爆。大学卒業後の1960年NBC長崎放送に入社されました。その翌年、明治時代にあった「隠れキリシタン弾圧事件」の最後の生存者を取材したことをきっかけに、「最後の被爆者が地上を去る日がいつか来る。その日のために肉声を残す必要がある」ことに思い至ります。そして、1968年、被爆証言を未来に遺すためのラジオ番組『被爆を語る』を企画・提案し、自ら初代担当を務められました。
しかし、約半年後に担当を外れたことなどから、1970年に退社。その後は、独力で被爆証言の録音を始め、重い録音機を抱え、青森から沖縄まで8年をかけて、被爆者を訪ねられました。録音を断られた人を含めると2000人以上の被爆者を訪問されたとお聞きしています。また、夜警や皿洗いなどのパート労働をすることで、録音するための時間と費用を捻出されたそうです。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、このように伊藤明彦さんが生涯をかけて集め続けた1000件を超える被爆者の音声録音は、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館建設時に、ご寄贈いただき、祈念館で保管・公開しております。
私も伊藤明彦さんから寄贈いただいた被爆者の音声録音の一部を聴きましたが、いずれの録音も被爆者の方の生々しい体験が語られているものでした。また、語られる中で被爆者の方の声もだんだんと熱を帯びていき、聞いている方もどんどん引き込まれていく感覚となる被爆証言でした。
伊藤明彦さんの被爆者の音声録音は、祈念館の遺影・手記閲覧室及び平和情報コーナーでお聴きしていただくことができます。音声録音の多くは、1時間を超えますが、視聴しやすいスペースもありますので、ぜひ一度お聞きいただければと思います。
【戦後80年ドラマ「八月の声を運ぶ男」放送予定】
2025年8月(89分・全1回) NHK総合テレビ
