館長だより
『祈念館へようこそ⑤』 静寂と厳かさに包まれる 「追悼空間」その2
2026/03/16
みなさま、こんにちは。国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館長の野瀬です。
『祈念館へようこそ』 の第5回では、「追悼空間」に安置している原爆死没者名簿などについてご紹介します。
『追悼空間』の奥まで進み、爆心地の方向に向き直っていただくと、12本の光のガラスの柱の奥に、原爆死没者名簿を安置している名簿棚を見ることができます。
この名簿棚は、27段の棚がある高さ9メートルの縦長のガラスの箱で、この中に長崎市が所有する原爆死没者名簿が安置されています。
現在、「追悼空間」の名簿棚には、201,942人の原爆死没者のお名前が記載された205冊の原爆死没者名簿が安置されています。原爆死没者名簿は、長崎市が毎年度作成しています。前年度の8月1日から当年度の7月31日までの一年間に亡くなられた被爆者のお名前が記載した原爆死没者名簿が作成され、8月9日の平和祈念式典で新たに奉安されています。
また、この205冊の原爆死没者名簿には、一冊の白紙の名簿が含まれています。熱線や爆風によって多くの人々が一瞬にして命を奪われたあの日、爆心地周辺では、ご家族全てが亡くなられた家もたくさんありました。そのため、お名前を特定することすらできない原爆犠牲者が数多く存在しています。白紙の名簿は、そうした「名前さえも残せなかった原爆犠牲者の方々」を追悼するために奉安されています。
名簿棚の前には、木製の献花台を設けており、花束や千羽鶴を置くことができるようになっています。平和集会で来館した児童・生徒たちの千羽鶴や来館者が折られた折り鶴などが絶えることなく手向けられています。
また、「追悼空間」では、地上にある大きな「水盤」を通り抜けた太陽の光が、地下の静謐な「追悼空間」の床に届くことで現れる美しい虹(光のプリズム)を見ることができます。
ただ、残念なことに、2月頃と10月頃の限られた時期の、さらに晴天時の午後のわずかな時間にしか見ることができません。
以前、修学旅行で来館した子どもたちが追悼空間で平和集会をしている最中に、大きな虹が出たことがあります。虹を見て子どもたちは大喜びし、虹と一緒に記念撮影をしていました。偶然に立ち会えた時の感動はひとしおだったようです。
祈念館の「追悼空間」は、静寂と光が織りなす祈りの場所です。
ぜひ一度ご訪問してみていただき、ご自身で体感していただくことをお勧めします。
次回『祈念館へようこそ⑥』では、「交流ラウンジ」をご紹介します。


