館長だより

黒本に逢える夏の季節

2022/07/13

皆さま、こんにちは。
国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館の館長 高比良です。

先日、土曜日に祈念館に寄った際、常駐の朗読を聞きました。朗読をしていただいたのは、永遠(とわ)の会の原尾尚美さんでしたが、朗読終了後に自らのお話をしていただきました。

原尾さんは、結婚後長崎市に移り住み、被爆者の義母から時折、被爆体験を聞くことがあったそうです。義母は、息子(夫)さんには被爆体験を話すことが少なく、義母が入院した際に、原尾さんは被爆体験の断片を聞くことができたとお話しされました。そして、祈念館の黒本(国が収集した被爆体験記)の中に、義母の被爆体験記を見つけた時は、夫も「母の字に間違いない。」と声を震わせたそうです。

私も被爆2世ですが、被爆者の父母から被爆体験を聞いたことはありません。ある時、私の息子が夏休みの自由研修に被爆体験をテーマに、母に体験を話してもらったことがあります。その時、母は、少しずつ被爆当時の話をしてくれましたが、それが最初で最後でした。今思えば、生前にもっと話を聞けばよかったと悔やんでおります。

今年5月31日(火)、長崎市の淵中学校が、祈念館で永遠の会の指導のもと、黒本をテーマに研修会を行いましたが、参加した中学生や教師が自分の曽祖父や曾祖母の名前を見つけて感激していました。黒本の中に心に残る言葉を探すとともに、被爆の実相を自分ごととして捉えていただく良い機会だと思っております。

祈念館の遺影・手記閲覧室では、黒本だけでなく、原爆に関する専門書、写真集、絵本なども手に取って自由に読むことができます。

今年の夏、追悼平和祈念館に来ていただき、77年前の長崎で、原子雲の下で何が起こったかを知るのもとても重要だと思います。

皆様方のご来館を心からお待ちします。

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